Seminar report

第20回 IPSG学術大会開催されました【後半】

  • IPSG学術大会

◆午後の部 咬合育成の講演のレポートは佐藤孝仁先生からお届けします。
午後のトップバッターは特別講演の元開 富士雄先生です。

今回は『子供の成長過程においての歯科のかかわりについて』についてお話して頂きました。

ご自身を小児歯科医ではなく、「保育歯科医」という言い方をされていました。

そこには元開先生の深い考えに基づいています。
STEP1では、保育の目標についてお話して頂きました。
スライドが始まるやいなや、「自分が子供を診る歯科医師としてではなく、まず大人として、子どもに関わる者として何が必要かについて考えるべきだ」とおっしゃいました。
この瞬間、本当に深いなと思いました。
結論から言いますと、子どもを育てる上で大切なのは、「子どもが自立できるようにしてあげられること」と強調されていました。
つまり、元開先生が考える保育の目標とはまさに子どもの自立にあるそうです。
そして、“子どもの自立”とは何かについて詳しくスライドを使いご説明いただきました。

このスライドでも出ていますように、子どもの成長には身体自立をし、生活自立をし、社会自立をするといった順番できちんと身に付けることが大切であり、どうやってそれらに付随する機能を獲得するかについてお話いただきました。
ここで上げた、身体自立と生活自立は7歳までに獲得し、集団での教育の準備をする必要があるそうです。
そして、このつの自立には7歳までに体性感覚(触覚と固有感覚)を育て、運動企画、学習、コニュミケーションの力を付けることだそうです。
とっても難しいお話ですが、この学術大会に参加されていた先生は本当に幸運で、具体例を上げながら詳しくご説明いただいたのでよく学べたと思います。
レポートでは掻い摘んでしかお伝えできないのが本当に残念です。
STEP2は口の感覚と精神の自立についてです。副題として“子どもの自立に欠かせないもの”

“口は生きることを支える信頼形成の場”であるというスライドから始まったのですが、本当にその題にふさわしい内容を発表されました。

ちょっとだけご紹介しますと、“生きる力”には愛着と信頼が不可欠だそうです。
その愛着形成の確立は母子の信頼関係の確立と同じで、それは哺乳の際に赤ちゃんの口唇、舌、指先、鼻尖という敏感な部分が、お母さんのおっぱいに触れることで形成されていと説明されていました。
哺乳というのは歯並びのためだけでなく、心を育てるということに深く感動しました。
聞けばなるほどと思うような内容や知らなかったと思う内容が多くあり、先生が初め自分は小児歯科医ではなく、保育歯科医であるとおっしゃっていた理由がよくわかる内容であったと思います。
とても素晴らしい発表有難うございました。

今回レポートをさせて頂きましたが、あまりにも衝撃的な内容や聞いたことがない内容ばかりでしたので、内容が多少間違っていることがあるかと思いますがご了承ください。
◆『MYOFUNCTIONAL ORTHODONTICS』 大石 暢彦先生

次は、IPSG会員の大石 暢彦先生です。先生は、今回ご自身がされている機能矯正についての発表をしていただきました。
先生は世界の子どもたちと比較して日本の子ども達は口をぽかんとさせている子どもたちが多くいることを強く感じられています。
それは、日本の食生活や家庭環境にも多く問題があると指摘されていました。つまり、口の中だけ見ていても治すのは難しいと感じ始めたそうです。
お口をぽかんと開けた子ども達を何とかしようと、多くの家で行える筋機能療法も試してみたそうですが、なかなかやってくれず困っていたそうです。
そんな中「TRAINER SYSTEM」という機能矯正に出会ったそうです。


あまり日本では有名ではありませんが、『機能が整えば、形態は良くなる』という概念のもの行われている機能矯正の一つの発表をしていただきました。
このシステムで使用されているトレーであるT4Kは唇を閉じて口呼吸から鼻呼吸にするシステムであり、機能が整えば、形態は良くなっていくという概念で作られているそうです。
そこで、実際にご自身の息子さんをこのトレーナーシステムだけで歯列を改善させていった素晴らしい症例を発表されました。

入れるのは夜寝るときだけ、学校から帰ってきたときにはめていただく装置だそうです。このように、機能矯正はブラケット矯正と違い取り外しが出来るという利点があります。
他にも、ブラケット矯正で治すのではなく、舌や口輪筋や頬筋などの筋機能を整えるトレーナーシステムを使用するだけで綺麗な歯並びになった症例を数多く発表していただきました。
ホールの外に実際のT4Kの展示トレーやパンフレット等が展示されており、発表後に多くの先生が大石先生を取り囲んでさらに話をお聞きになられ、とても多くの先生方の興味を引く内容だったのだと感じました。
私も他の機能矯正を学んではいますが、これからの小児矯正治療はやはり筋機能を考慮にいれた治療が主流になってくるのではないかと思わせる素晴らしい発表でした。
大石 暢彦先生ありがとうございました。
『人工授乳と母乳児のお口の成長について』 今井 美行先生
次は、特別講演の先生で、『おっぱいとお口の話』というベストセラーの本を出版されている今井 美行先生です。


この講演で今井先生は長期母乳育成児を強くすすめられていました。

先生はご自身の人工乳で育った体験から、母乳が一番であると理由を詳しくご説明いただきました。
もし、人工乳にする場合は、哺乳瓶はドイツのN会社のニップルをオススメされておりました。
とても興味深かったのは、赤ちゃんがおっぱいを飲む動画とP社の哺乳瓶で人工乳を飲む動画を見せていただいたのですが、その違いは本当に一目瞭然でした。
きちんと動画をとり比較することで、母乳による哺乳がいかに口腔周囲筋などの筋機能に影響するかが良くわかります。
さらにさらに、今回はとても稀な症例があるということで特別講演になったのですが、その症例とは双子で母乳で育った子と人工乳で育てた子の発表して頂きました。
お兄ちゃんは母乳で育てたのですが、弟くんは母乳に吸い付かなかったそうで仕方なく人工乳で育てたそうです。
その結果この二人がどのような成長を遂げたかを模型等のスライドを出しながら紹介していただきました。
その結果はこちらです。

この結果からわかるように、おっぱいがお口を育てていることが理解できます。
大変貴重な症例から、“おっぱいを吸う=お口を育てる”を説明いただきました。

また、この話以前に元開先生の哺乳が心を育てるといった内容の話があったため、哺乳の大切さが人の心とお口の形成に大変重要な役割を果たしていることがよく理解できました。
今井 美行先生ありがとうございました。
『歯科医だからできる高齢者の健康管理とリハビリ』 飯塚 能成 先生
次は、IPSG会長の飯塚 能成先生の発表です。
先生は稲葉繁先生が開発された筋機能訓練器具ラビリントレーナーを使用し、介護施設や運動クラブなどに出向かれてその普及や診療、記録の採取に尽力されております。

まず初めに、IPSGのドイツ研修旅行で行かれたドイツの介護施設を紹介していただきました。
介護施設とはいえども、ご自宅のように生活するということを大事にされているそうです。そのため、お部屋には自分の好きな絵や家具を置き、食事もプラスチックではなくきちんとした陶器のお皿を使用するそうです。

また、介護者の健康もきちんと考えられています。
そのため、立てない方を立たせるときも介護者が行うのではなく器械を使用しなければならないという決まりがあるほどだということです。

飯塚先生は多くの介護施設に実際に足を運び、いろいろと活躍されていますが、その現状のスライドを数多く発表されていました。
残念ながら写真ではお見せできません。
特に誤嚥性肺炎性の危険性について説明していただきました。
胃瘻にしても、その可能性は下がらないともおっしゃっておられました。
また、口呼吸による感染の危険性を指摘されていました。
今までの口腔ケアから、これから誤嚥性肺炎や口呼吸やら鼻呼吸にするということを踏まえた新しい口腔ケアが必要であると強調されました。

そのケアにはやはり、ラビリントレーナーでの訓練が大切で、その重要性についても教えていただきました。

数々の口呼吸による重度の歯肉炎や口角炎や舌の使い方の悪い患者様の症例を多くスライドでお見せいただきました。
こういった患者様を飯塚先生はラビリントレーナーを用いて口腔周囲筋の訓練を行い口呼吸から鼻呼吸に改善していきます。
こんなことでこんなに良くなるのかと思うような症例で、みなさんビックリされていたと思います。
本当に飯塚先生は誰にお願いすればいいかわからないような患者様を数多く奇跡的に改善させています。
例えば、麻痺のある患者様が麻痺側の手で紙コップを握れるようになるなどまさに奇跡です。
口腔周囲筋や鼻呼吸がこんなにも全身に影響しているのかと思う発表でした。
これからの歯科医は歯を削ったり、詰め物を詰めたりするだけではなく、お口から全身に目を向けて行かなくてはいけないと改めて感じました。
飯塚 能成先生ありがとうございました。
レポート 稲葉歯科医院 佐藤孝仁先生

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