Seminar report

’15 1/11(日)『パーシャルデンチャーの臨床』~パーシャルデンチャー設計の基礎を学ぶ~開催されました

’15 1/11(日)『パーシャルデンチャーの臨床』~パーシャルデンチャー設計の基礎を学ぶ~開催されました

平成27年1月11日 
パーシャルデンチャーの臨床 テレスコープシステムの臨床
レポート:歯科医師 佐藤孝仁先生

パーシャルデンチャーの臨床20150111

新年が明けて、初めての研修です。
11日はパーシャルデンチャーの臨床、12日はテレスコープシステムの臨床というテーマで、11日の研修は、午前は稲葉繁先生、午後は岩田光司先生に講演をして頂きました。

午後に講演される岩田光司先生は、学生の頃から現在に至るまで稲葉繁先生のもとで学ばれ、稲葉繁先生が考える咬合理論をもとにIPSGで学べる様々な技術を実際の臨床に活かしていらっしゃいます。

【午前】稲葉繁先生

日本には、ノンクラスプデンチャーと言われるような義歯が多く存在しますが、そういったパーシャルデンチャーは本当に長持ちするのか、支台となっている歯を本当に守れるのか疑問に思います。

稲葉繁先生は1980年以降、テレスコープシステムをはじめとする様々なケースをパーシャルデンチャーでの治療をされてこられました。

その経験から、何十年と経過した症例を紹介していただきながら、長く口腔内で機能させるために必要なパーシャルデンチャーの設計と製作方法をお話頂きました。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

まず、初めにドイツで行われている歯科事情についてお話していただきました。
1つだけご紹介しますと、ドイツではテレスコープシステムは日常的に行われており、最近ではテレスコープとインプラントを融合させた高度な技術が行われているそうです。

IPSGでも昨年、チュービンゲン大学の歯学部長やヨーロッパ補綴学会会長をされているヴェーバー教授をお迎えしてドイツの歯科事情についてお話いただきました。

パーシャルデンチャーの設計や治療法など技術的なものを学ぶ前に、私達歯科医師は歯科治療を行う上での目的をきちんと持たなければいけないと感じました。

私達歯科医師はホメオスタシスを維持するための“食物摂取系”という部分を担っております。
虫歯治療や歯周病治療は、それを維持するための補助手段に過ぎません。

歯科医師として、国民の健康の維持を担っているということを自覚しなければならないと、強くおっしゃっていました。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

そのためには、保険診療や自費診療というくくりで治療を選択するのではなく、患者様にとって最善な治療を目指さなければいけません。

IPSG包括歯科医療研究会では“Das Beste order Nichit”(最善か無か)という診療テーマがあります。
私も、この言葉に恥じないような心と技術の研鑽を積んでいかなければいけないと常々思っております。

IPSGで学ぶパーシャルデンチャーやテレスコープシステムの事を、稲葉繁先生は、「予防補綴」と提唱しています。

予防補綴という言葉は、稲葉先生が考案されました。
患者様の健康を長く維持していくための技術として、“予防補綴のすすめ”という本を以前に出版されました。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

1980年に治療された症例を紹介されていましたが、こういった義歯が30年以上経った今もなお健在だという事を考えますと、とても長持ちする義歯であることはお分かりかと思いますが、この義歯が患者様にもたらした健康ははかりしれないと思います。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

【午後1部】岩田光司先生

お昼休憩をはさみ、午後は稲葉繁先生の考えをさらに掘り下げた内容を岩田先生が講演です。

岩田先生は、1998年に日本歯科大学を卒業され、1999年~2004年に日本歯科大学高齢者歯科に在籍し、その後今にいたるまで稲葉繁先生の考えを忠実に臨床に活かされています。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

細かな咬合理論やパーシャルデンチャーの設計において大切なポイントを、岩田先生に講演して頂きました。

まず、咬合理論を語る上では、身体のアライメントを意識することも重要です。
中心位とはどのような状態か、また咀嚼筋や顎関節の知識もなくてはいけません。

そして、安定した咬合とはどういった状態なのかをきちんと学ぶことが、長持ちするパーシャルデンチャーの治療につながります。

安定した咬合を学ぶ上で、梃作用を知らなければいけません。

梃作用には1級、2級、3級があります。
不正咬合は何級の梃なのか、どういった梃作用が理想的なのか説明されていました。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

このような咬合理論をきちんと1つ1つ積み重ねることにより、安定した咬合治療ができるようになり、長持ちする補綴処置が出来る様になります。

咬合理論を一通り説明していただいたあとは、1つの症例をもとにパーシャルデンチャーの基本知識から応用(具体的な設計方法など)までのお話をしていただきました。

例えば、義歯を学ぶ上で、どのような固定方法があるのかを知ることも大切です。
通常、パーシャルデンチャーやアタッチメント義歯などは二次固定です。

IPSGで学べるテレスコープシステム(リーゲルテレスコープ)の内冠は一次固定、外冠は二次固定です。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

パーシャルデンチャーの設計手順について、きちんと学んだことはあるでしょうか。
私が大学生の時は、手順などは教わりませんでした。

設計の知識を身につけることは、とても重要です。
設計を間違えてしまうと咬合力が歯軸方向に伝わらずに、支台歯に負荷をかけてしまい、何度調整しても合わない義歯になってしまいます。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

根拠のある設計手順についても詳しく教えて頂き、初めて受講された先生には驚きがあったかと思います。

咬合器をもちいた欠損症例について、実際の症例を用いながら説明いただきました。
患者様の個人情報のため写真を掲載することは出来ませんが、症例を通して学ぶことが出来ました。

咬合器を用いて診断することで、現状の問題を知る事ができ、さらには審美の分析、咬合機能、身体の安定性、顎関節などを考慮にいれた治療計画をたてる事が出来る様になります。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

受講された先生方は、稲葉繁先生の技術を忠実に行うとどのような診療ができるようになるかという事を、岩田先生の症例をご覧になり理解されたのではないでしょうか。と同時に、岩田先生の技術の高さもご理解いただけたと思います。

【午後2部】稲葉繁先生

超高齢社会を迎えた日本にとって、8020達成のためにもパーシャルデンチャーの知識が重要になってくるのではないでしょうか。

歯が抜けるのは老化が原因ではなく、齲蝕や歯周病といった感染や力のコントロールの不具合などから起こります。
それをふまえ、全身から診断をし、それに合ったパーシャルデンチャーの設計が必要になってきます。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

この研修会で何度も強調していましたが、設計で一番大切なのは“レスト”の設計です。
どこにレストを付けるかにより、クラスプや大連結子の設計が決まってきます。

パーシャルデンチャーの臨床20150111

11日はパーシャルデンチャーの臨床という内容で講演していただきましたが、この内容を土台として12日は、IPSGの柱としているテレスコープシステムについて応用的なお話です。

稲葉繁先生、岩田光司先生ありがとうございました。

レポート:歯科医師/佐藤孝仁先生

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