Q.嚥下障害があるかどうか、評価する方法、テストなどあるのでしょうか?

Q.嚥下障害があるかどうか、評価する方法、テストなどあるのでしょうか?

A.高齢者の嚥下障害の評価は大きく二つに分けられると思います。

一つは、加齢によってだんだんと嚥下機能が落ちてきている場合です。

普段の食事はむせずに食べられるが「少し飲み込みづらい」とか「時々むせる」「夜寝ると咳が出る」などの症状がある場合は嚥下力が落ちていることが考えられます。このような時、口腔トレーニングを開始すべきです。

もう一つは、要介護高齢者や脳血管障害者など著しく嚥下機能が落ちている場合です。後者の場合、嚥下評価は誤嚥性肺炎のリスク判定や食事の形態の選択をする時、リハビリの効果判定に役立ちます。

仕方なく経管栄養にする時などは、嚥下評価し判断する必要があります。ただ単にむせるからという理由で、嚥下リハビリをせず経管栄養にするのはどうかと思います。

また経口摂取に戻す時などは、しっかりした評価が求められると思います。

私たちは普段呼吸をしながら食事をしています。しかし、嚥下する一瞬だけは呼吸を止めて食べ物を飲み込んでいます。これは呼吸運動の中に一瞬だけ嚥下運動がある、と思ってもいいかもしれません。

嚥下評価リハビリ病院などで専門的に行われている嚥下評価としては、

■VF嚥下造影検査
エックス線装置を使い、エックス線造影剤を混入した検査食を用いて、嚥下状態を観察するVF嚥下造影検査があります。

■VE嚥下内視鏡検査
嚥下内視鏡を用いて経鼻的に咽頭、喉頭を器質的、機能的に観察するVE嚥下内視鏡検査があります。


その他の評価方法としては、

■反復唾液嚥下テスト(RSST)
方法:唾液嚥下を30秒間繰り返してもらう
「できるだけ何回も飲み込んでください」と指示
喉仏のあたりに指をあてて嚥下の有無を確認する。

評価:30秒間に2回以下の場合、嚥下開始困難、誤嚥が疑われる
3回以上の場合は、ほぼ問題なし


■改訂水飲みテスト(MWST)
方法:冷水3mLを口腔前庭に注ぎ、嚥下してもらう。
嚥下反射誘発の有無、むせ、呼吸の変化を評価する。
・判定基準
 1点嚥下なし、むせる、そして/または、呼吸切迫     
 2点嚥下あり、呼吸切迫(不顕性誤嚥の疑い)
 3点嚥下あり、呼吸良好、むせる、そして/または、湿性嗄声(しっせいさせい)※)        
 4点嚥下あり、呼吸良好、むせない
 5点 4点に加え、空嚥下の追加を指示し、30秒以内に2回空嚥下可能              
 評価:上記5段階で評価、3点以下の場合、誤嚥が疑われます。※)湿性嗄声・・・湿ったガラガラ声のこと。
嚥下の後にみられると、咽頭残留や誤嚥が疑われます。

この他にも、水の代わりにプリンなどを食べさせて評価するフードテストがあります


■聴診所見
方法:まず、飲水や食事の前に肺か頸部の呼吸音を聴診器で聞いておき、食後の音と比較する。評価音に変化があれば誤嚥を疑う。
「のどや肺でゴロゴロ音が聞こえるようになった」
「呼吸音が聞こえにくい場所が生じた」など


■食後の咳と痰
食事中や食後に、集中的に咳がでるようなときは誤嚥の可能性があります。
食事を開始してから痰の量が急に増えた時なども危険です。
  一般的に誤嚥している方は食事していない時も痰がからんでいることが多いように感じます。


■血中酸素飽和度モニター
食事中パルスオキシメータを指に取り付け、酸素飽和度が3%以上低下するか、酸素飽和度90%以下になれば誤嚥を疑う。
嚥下困難な人は誤嚥性無呼吸になりやすいため酸素飽和濃度が低下します。

以上のような評価方法があります。

誤嚥性肺炎の原因は、食べ物を誤嚥するというよりも、口呼吸による口からの細菌の侵入や口腔内や、咽頭内にバイオフィルムとして付着している細菌を唾液とともに誤嚥する場合や、経管栄養の栄養剤が食道を逆流して口腔内にあふれ出し、それを誤嚥し誤嚥性肺炎を発症してしまうことが多いようです。

経管栄養に変えても、誤嚥性肺炎の発症率は変わらないそうです。
食べ物を誤嚥してしまう場合は、むしろ窒息などに気を付けなくてはなりません。

また、寝ている時は嚥下機能が低下するため、誤嚥しやすいことを覚えていたほうが良いでしょう。
私は口を開いて寝ている方を見た時、誤嚥を疑います。


■加齢による高齢者の嚥下機能評価
高齢者の場合、老化による口腔周囲筋の衰えにより嚥下機能の低下が起こりますが、他にもいろいろな原因がありますのでよく観察することが必要です。

例えば、こんな症状を訴える時、口腔機能が低下し、嚥下機能や呼吸機能の低下を起こしていることを疑う必要があります。

・顔や喉に皺が増えた
・夜寝ていると喉が乾く
・口内炎ができやすい
・唇が乾燥している
・唾液が少ない
・声がかすれる
・夜寝ると 咳が出る
・時々むせる
・食べ物を飲む込みづらい
・胃腸の調子が悪い
・歩くとすぐ息切れして疲れる 
・猫背になった

▼以上の様な症状を訴えた場合の観察ポイント

・口唇閉鎖、
・唇のボリューム
・口唇の乾き
・咀嚼機能
・頬の筋肉
・舌のボリューム
・舌の動き
・舌口蓋閉鎖
・舌苔
・口内炎
・腫瘍
・傷
・味覚
・知覚
・喉頭の上下的位置
・口角の位置
・首などの筋肉のたるみ
・口呼吸になっていないか
・口臭
・肺活量
・声の質や大きさ
・胸の動き
・姿勢
・口輪筋や舌圧
・唾液量
・唾液の質

など、筋力の低下ばかりでなく、他にも様々な原因や症状がありますが、注意深く観察し何が原因なのか判断する必要があります。
他に、脳梗塞などの症状が隠れていることもありますので注意が必要です。

また、歯の欠損や不適合な義歯や義歯が装着されていない場合や、唾液量が少ない場合に咀嚼機能が低下するため、食塊形成が不十分になり嚥下困難になることも注意すべきです。

私は口角が下がり口呼吸の人、唾液量の少ない人、痰が絡んで咳き込む人、舌先まで舌苔が付いている人は、呼吸や嚥下機能の低下が起こっていると疑う様にしています。

また、舌や唇の力は直接嚥下機能に関係があるので、舌や口輪筋の筋力測定結果をリハビリ前後の評価によく使います。

以上、嚥下評価について書きましたが、咀嚼と嚥下と呼吸を歯科医がしっかり評価し、正常に保つことができれば、さまざまな疾患を予防し健康を維持することができると思います。

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