Q.嚥下する時に使う筋肉について教えて頂きたいと思います

Q.嚥下する時に使う筋肉について教えて頂きたいと思います。

また、舌癖の患者様の場合、どこの筋肉が疲労するのかについても、合わせてご教授いただけると大変勉強になります。
どうぞよろしくお願いいたします。

A.摂食、嚥下運動は、顎口腔系の機能と共に咽頭から食道にかけての総合的な運動です。

嚥下行動は

1.食物の認識 (先行期)
2.口腔への送り込み(準備期)
3.咀嚼と食塊の形成 (準備期)
4.舌根部・咽頭への送り込み (口腔期)
5.咽頭通過、食道への送り込み(咽頭期)
6.食道通過(食道期)

という段階で行われます。

従って、その段階ごとに作用する筋肉が異なっています。

まず先行期では食物の大きさ、硬さ、粘着性、温度などを眼、鼻、唇で認知します。この時、唇と舌が使われますので筋肉は口輪筋、舌筋を使い口の中に送り込みます。

咀嚼では特に咀嚼筋である咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋が働き、舌と唾液により食塊を形成します。
そして、舌背に載せて中咽頭へ送り込みます。その時使われる筋肉は、舌筋は顎舌骨筋、舌骨舌筋、顎舌骨筋などです。

顎をしっかりと固定し、口腔内を陰圧にする顎二腹筋、顎舌骨筋が働いています。

口蓋では口蓋帆張筋、口蓋帆挙筋が働くと同時に上咽頭収縮筋が働き、咽頭部に空間を作り食塊を咽頭へ送り込みます。

その後咽頭から食道へ送り込みますが、甲状舌骨筋が喉頭蓋を閉じ食塊が気道へ入るのを防いでいます。

以上のように普段、特別に意識しない食物を飲み込むという行動で多くの筋肉が協調して巧緻性が保たれています。
この様な嚥下行動も、加齢により徐々に悪くなってきます。

そのため高齢者になると食事中に飲み込みが悪くなったり、食べこぼしが認められたりします。
また、食物が食道へ流れず、気管に入る、いわゆる誤嚥という症状が現れます。

その結果「誤嚥性肺炎」の危険性が高まります。

嚥下運動の際、口蓋鄒壁に舌を押し付けた場合には舌が下顎側にあるため、下顎は後退し、顎がリラックスできる位置とほぼ一致するため、バランスを保つことができます。

逆に舌の突出癖がある場合には、下顎は飲み込みの回数に応じて前後に動きます。

通常、嚥下は1日に600~2,000回といわれるので、この癖を持つ人は、正常者に比較して、下顎の前後運動に関与する筋の疲労が増すことが当然考えられます。


舌は下顎の水先案内の役目をしており、舌を前に突き出せば、それに伴って下顎は自然に前に出て行き、舌を側方に出せば下顎も同じ方向に移動します。

したがって舌の動く方向に下顎も移動します。舌を突出させる嚥下運動は正常な筋肉の使い方ができず、頬筋、口輪筋、オトガイ筋というお口の周りの筋肉の緊張が強く現れてきます。

このようなアンバランスな筋肉の使い方の結果、臼歯は頬筋の緊張の影響で頬側から力を受け、歯並びは狭まり、前歯が広がり臼歯は内側に倒れてくる、Ωオメガ型歯列を形作ってしまいます。



嚥下をしたときの口腔周囲の筋肉の圧力に関しては、舌側からの圧力よりも強いといわれています。

「正常咬合者と不正咬合者の上下前歯部における口腔筋圧の研究」という根津の報告によると、正常咬合者の場合、安静時には、上顎唇側圧平均7.2g/cm2、同舌側圧平均10.1g/cm2、下顎では唇側圧8.6g/cm2、舌側圧14.6g/cm2であり、上下とも舌側圧が唇側圧を上回っていました。

さらに嚥下時では、上顎唇側圧は60.0g/cm2、同舌側圧は123.2g/cm2で、舌の圧力が唇の圧力の2倍を示したという、興味ある結果を得ています。

この報告から、舌の力と唇や頬の力の不均衡が起きることにより歯並びが悪くなることは、容易に納得できます。

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