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Q:総義歯の大きさは年齢とともに小さくするのでしょうか?

Q.総義歯の大きさは年齢とともに小さくするのでしょうか?
A:結論から申し上げますと、義歯の大きさは年齢が多くなっても小さくする必要がなく、顎の吸収に伴いその部分を義歯床でカバーするために、むしろ大きくなってくると思われます。

義歯の維持安定には顎堤のみならず、頬側では頬筋、前方では唇、舌側からは舌により支えられます。したがって天然歯の存在した場所がそのまま義歯にとり変わるのではなく、そこには義歯を維持させるため床が必要になってきます。

確かに顎堤は吸収して小さくなるのですが、義歯のサポートは軟組織に頼らなければなりません。床面積を大きくすることにより義歯の安定は大変向上します。

もともと歯の存在したときは口腔内にはスペースがある筈ですが、その空間は軟組織により封鎖されていますので一見判別できませんが、口腔周囲筋や唇、そして舌の力の均衡がとれているところに人工歯が配列されれば、義歯の維持安定にはもっとも良いことです。このバランスがとれたところにデンチャースペースと呼ばれる、力の均衡がとれたところがあります。

したがってこの場所は年齢を増すことにより変わることがないばかりか、むしろ筋肉の緊張度が下がることを考えると広がる可能性の方が多いと思われます。

そのような理由から維持安定の良い義歯を製作するためには、このスペースを見つけなければなりません。筋肉の均衡の取れた維持の良い義歯の特徴は装着すると人工歯が見えるのみです。一般には義歯の印象は上下別々に行う結果、印象にはデンチャースペースが取れてきません。

そのため、ろう義歯になってから、フレンジテクニックによりデンチャースペースを記録し、研磨面の形態を作ります。最近は歯科材料の改良に伴うテクニックの改良が進んで来ています。私はガンタイプの注入式シリコーン印象剤を使って、上下顎同時印象する方法を考案し、日常臨床に応用していますのでご紹介します。

この方法を使いますと、デンチャースペースが大変よく印象されます。すでに使っている義歯を改良する場合にも大変便利ですから応用してみてください。

上下顎同時印象法
患者が現在使用している義歯を使い、下顎の舌側や頬側全体にガンタイプのシリコーン印象材を注入し、デンチャースペースを採得してみますと、多くの場合義歯の周囲にシリコーン印象材が層になって義歯の研磨面に厚くついてきます。このような場合には義歯が小さすぎると考えられます。特に上顎では大臼歯の部分の頬側に、下顎では舌下隙から舌側溝に印象材が厚く付いてきます。さらに頬側の部分に盛り上がるように印象が取れてきます。

このような形態が義歯に再現されれば大変維持安定の良い義歯になります。義歯を新しく製作する場合にも上下顎同時印象をしますが、最初に個人トレーを使い咬合採得まで行っておきます。このときトレーには咬合堤をつけておき、これを使って咬合採得を行い顎位を決めておきます。

印象採得は最初に下顎の下側に印象材を注入し、同様にトレーの内面に印象材を盛り上げ、口腔内に圧接します。その後上顎の粘膜面に印象材を盛り上げたのち、口腔内に挿入します。余剰の印象材はトレーからはみだしてきますが、さらに頬側の奥深くまで印象材を注入します。そのとき患者には口角を牽引したり、唇を尖らせたりしてもらいますと、印象材は唇からはみ出てきますので、取り除いてください。

印象材が硬化した後、上下一塊として取り出します。印象には頬筋や舌の機能時の状態が再現されているのが確認でき、さらに唇の印象が現されているので、人工歯配列には好都合となります。このとき舌房の部分はシリコーンのパテタイプを用い空間を満たしますと、下顎の人工歯の配列に参考になります。

この一塊となった印象がデンチャースペースということになります。模型は顎堤の部分はもちろん、頬側の形態はコアーをとることにより保存します。

人工歯配列はこのコアと舌側シリコーンを参考にし、バランスのとれたところに並べ、歯肉面は人工歯とコアーの空間にパラフィンワックスを満たしたのち形態を整え、重合完成になります。

完成した義歯は印象とほぼ同様な形態となり、義歯と粘膜の間は満たされ、エアーの入り込む余地はなく、頬筋、唇のサポートが十分な大変安定の良い義歯となります。

このような結果、確かに顎堤の吸収は年齢を増すことにより大きくなり、義歯そのものは維持安定のためデンチャースペースを十分利用したいために、天然歯が存在したときより大きくなるのが普通であるということが理解して頂けたと思います。

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