Q.総義歯の咬合形式について教えてください。

Q.稲葉先生の総義歯はフルバランスドオクルージョンですが、他にリンガライズドオクルージョンのような咬合形式を用いる事などあるのでしょうか?

A.総義歯の咬合形式ですが、フルバランスドオクルージョン、グループファンクションドオクルージョン、カスピッドガイダンスドオクルージョン、のどちらを取るかは難しいところですが、義歯を如何に安定させるかが課題となります。

この中でも一番安定するのが、フルバランスドオクルージョンであるといわれます。

フルバランスドオクルージョンは中心咬合位で臼歯が噛み合い、前歯は僅かに理解します。
古典的なフルバランスの咬合は、偏心位では作業側も平衡側もすべての歯を接触させるというもので大変難しいと思われます。

したがって模型を咬合器にマウントするには、フェースボウトランスファーは必須の作業です。さらに咬合器の調節も患者の持っている顎関節の要素を、正確に調節しなければなりません。その上で正確な人工歯の排列を行わなければなりません。

この弱点として排列が難しいこと、患者のその時の状態に従って排列しますので、顎関節を良い状態に戻すことは不可能となります。

そこでシュトラックデンチャーではそのコンセプトが全く違い、義歯が顎関節を誘導するという考えです。

シュトラックの考えた人工歯は咬頭傾斜角を25度に与え、咬合湾曲は半径10cmで排列します。

その時咬合器は矢状顆路角は30度、側方顆路角は10度程度を与えておきます。その後人工歯排列はこの局面に沿って排列します。

最初に上顎前歯の位置決めを行いますが、上下顎同時の型採りによって唇の形状が記録されているため、これに基づいて前歯の位置を決定します。

フェイスボウトランスファーを行い、正確に再現された模型の左右前後のバランス、形をよく観察します。


前歯は患者様の要求度が高いところであり、個性の表現が大切です。上顎前歯の先端は、唇から2〜3ミリ程度下げるのが一番美しく見えるポイントです。

前歯はあくまでも審美性を優先し、患者様のご希望に合わせ行います。

さらに、歯が抜けた後に残っている溝などから、天然歯があった位置を確認し、上顎の硬い部分柔らかい部分などを分析して、模型に線を引いていきます。

また、上顎にある、口蓋皺襞の一番目の皺襞の端から9ミリのところに、犬歯の唇面があたるのが基準(基準CPCライン)といわれています。

そういった基準も重視しながら、前歯から奥歯へと順番に、上顎の歯を並べていきます。


床の外形部分(歯肉形成)は、上下顎同時に型採りを行うことにより、粘膜の可動部と固定部の移行部など、様々な情報が得られているため、自動的に外形を決定することができます。


続いて下顎の犬歯を並べます。この位置が決まることで、臼歯を並べる位置の基準ラインを決定することができます。

その後、調節湾曲というテンプレートを用いて、理想的な歯並びになるように人工歯を並べていき、最後に下顎の前歯を並べます。


下顎で最も大切なところは、舌側の形です。

上下顎を同時に型採りすることにより、舌を前にだしたり、嚥下運動が記録できるため、舌側の形を記録することができます。基本的にはこれが下顎舌側の床の外形となります。

舌の動きを十分考慮することが大切です。通常、従来の総入れ歯は、嚥下や発音の時に舌の動きのじゃまになる場所に床の外形を延ばします。すると、舌に痛みを感じたり、外れやすくなったり、発音が難しくなります。


シュトラックデンチャーの特徴として、後顎舌骨筋窩の上で止め、舌の動きを邪魔しないように設計されています。

そのかわり、舌の動きにはほとんど左右されないサブリンガルルームを利用し、維持安定に役立てています。

シュトラックの人工歯(商品名オルソシット)を使用したフルバランスは作業側では小臼歯の2本が誘導し、平衡側では反対側の大臼歯のスタンプカスプの内斜面が誘導しバランスを取ります。

下顎前方運動では、下顎の第一大臼歯の近心斜面が上顎第二小臼歯の遠心斜面を誘導し、安定させる形式です。
この総義歯は患者の顆路とは関係なく、義歯が顎を誘導する形式です。

従って顎関節の形態が悪い場合には、リモデリングを期待できます。特に総義歯の顎関節症の治療には推薦できます。

総義歯のもう一つの咬合として、リンガライズドオクルージョンがあります。

この形式は、Dr.パウンドにより提唱された咬合様式でバランスドオクルージョンのひとつの形式です。総義歯では下顎の安定が難しいために考えられたものです。

それは上顎の臼歯の咬頭のみが下顎の中央窩に嵌合させ、義歯を安定させるものです。

即ち上顎の小臼歯の舌側咬頭2か所、第一大臼歯の近心と遠心の舌側咬頭2か所、第二大臼歯の近心舌側咬頭1か所、計5か所の咬頭を下顎の中心窩に噛みこませる方式で、上顎が杵となり下顎が臼の役目をするものです。

このようにすると下顎の義歯は中央に荷重を受けて義歯の動揺を防止することが出来るという考え方です。この形式に用いる人工歯も発売されています。

私の考えは、もし顎関節が擦り減っている場合には、リモデリングを期待することはできないということです。

IPSGでは、シュトラックデンチャーの詳細な排列デモのDVDが発売されていますのでご参照ください。

▼【DVD / Blu-ray】ライブで見せる 究極の総義歯2
http://www.ipsg.ne.jp/dvd-buy/

・商品内容
総義歯ライブ実習とは3日間に渡り診断から完成まで、その工程をすべて患者様と研修者の前で行い、結果を出すという画期的な実習研修です。

実際に患者様とのやり取り、また製作、判断において先生が見たいポイントやIPSG認定技工士、岡部氏の排列も余すところなく収録されています。


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