’15 6/21(日)『総義歯の基礎と臨床』開催されました

平成27年6月21日
総義歯の基礎と臨床

レポート:歯科医師/小西浩介先生

今回の『総義歯の基礎と臨床』も全国から沢山の先生方にお集り頂きまして、本当にありがとうございました。現在の日本では80歳以上の6割の方が総義歯という時代です。今後、より総義歯の需要が高まると予想されるため、先生方の関心も高まってきているのではと感じます。

150621総義歯の基礎と臨床

患者様に吸着して機能する良い総義歯を作ってあげたい。それは私たち歯科医師にとって共通の想いだと思います。

しかし、総義歯に対して苦手意識をもつ先生は少なくないと思います。従来の方法では印象・咬合採得・技工操作など、どれをとっても難しいものではないでしょうか。なるべく簡単で質の高い総義歯を。IPSGではそのような総義歯システムをご提案させて頂いております。

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今回、稲葉繁先生が開発された『上下顎同時印象による総義歯システム』について、稲葉繁先生とIPSG副会長の岩田光司先生に講演して頂きました。

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このシステムのルーツは1978年までさかのぼります。1978年ドイツ、チュービンゲン大学の客員教授として稲葉先生が留学をしていた頃、イボクラー社での総義歯のイボクラーデンチャーシステムのセミナーを受講されました。

当時このシステムを目の当たりにして、衝撃を受け深く感動したことがはじまりだそうです。その当時の補綴研修部長が、BPSの大元である有名なシュライヒ先生です。シュライヒ先生と稲葉先生はこれを機に親交を深めました。

そしてシュライヒ先生が引退する際に、稲葉先生はシュライヒ先生からすべての資料を譲りうけています。

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その膨大な資料の内容をおりまぜながら、お話して頂きました。日本での総義歯の多くは、100年以上も前のギージーの歯槽頂間線法則で製作しており、残念なことに全く進歩していません。

1949年ドイツ、チュービンゲン大学のシュトラック教授は、それまでのギージーによる歯槽頂間線法則を否定し、口腔周囲筋による安定を求めました。

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稲葉先生はこのシュトラックデンチャーとシュライヒ先生のイボクラーデンチャーシステムを改良・進化させ、デンチャースペースをそのまま印象するという画期的な方法を開発されました。

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これはこのシステムの最大の特長であり、他のシステムでは見たことがないと稲葉先生は言います。口腔内のデンチャースペースを一塊にとりだして、咬合器上で2つに割る。したがって、狂いようがありません。

従来の方法ですと上下別々に作って合わせるので、とても煩雑で困難です。一つのものを割って、一つにもどす。これは貝殻や化石のように一つのものをわっても、必ずお互いがぴったり合うということに基づいています。

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この上下顎同時印象のシステムのステップには、他にたくさんの画期的なアイデアが詰め込まれています。このレポートではそのうちの何点かをご紹介させて頂きます。

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これは上下顎の咬合採得を簡単にとることができるSIバイトトレーです。これは稲葉先生が開発されもので、従来難しいとされている咬合採得が非常に簡便になります。このSIバイトトレーは多数歯欠損にも使用できるので、私たちの日々の臨床に大変便利なものになります。

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下顎の義歯の形態が吸着の鍵です。サブリンガルルームを十分につかうことで、顎堤の吸収程度にかかわらず十分な吸着が得られます。

日本では昔から顎舌骨筋線よりも下に床をいれることで安定させようとする義歯の形態が多いように感じます。しかしそれでは舌の動きを阻害し、嚥下時に浮き上がってしまうため義歯は安定しにくいですし、吸着も難しいと思います。

したがって、顎舌骨筋線よりも下の部分は利用せずサブリンガルルーム(舌棚)を利用し吸着を狙っています。その印象方法や注意するポイントなど、詳しく説明して頂きました。

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この歯列上で描記する3点式のゴシックアーチも斬新です。

従来のゴシックアーチでは舌の中央にきますので、舌が阻害され顎運動に影響を与えてしまいがちです。この中央のピンはクリステンセン現象を考慮にいれ、スプリング式のピンとなっています。

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このように、こんな細かい部分にも稲葉先生のアイデアが活かされています。人工歯はシュトラック先生のオルソシットを使用し、咬合様式をバランスドオクルージョンに設定します。

総義歯の患者様の顎関節は状態が良くないことが多いというデータがあります。状態の良くない顎関節に人工歯を合わすという考えではなく、人工歯が顎関節を誘導する総義歯を作るという考えに基づいています。こうすることにより、顎関節のリモデリングを期待します。

これら以外の他の製作ステップや使用する材料についても、たくさん説明して頂きました。このシステムの全てを今回のレポートでは書ききれませんが、一つ一つのステップの完成度が非常に素晴らしく緻密に計算された構成になっています。

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こうして出来上がる総義歯は完全にデンチャースペースを満たしており、吸着はもちろんのことしっかり機能できるようになっています。

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この上下顎同時印象はシュライヒ先生やシュトラックデンチャーを改良・進化させ稲葉先生の発明が加わることで、まさに究極の総義歯システムとなっています。今回も内容の濃い講義でしたが、実践するには一つ一つの細かなステップを実際に確認されることをおすすめいたします。

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毎年、実際の患者様を3日間で総義歯を作製・完成させ、最後に一緒に食事をするというライブ実習が来月の7月に3日間コースで開催されます。この実習コースで全ての製作ステップを実際に見ることができるので、より理解を深めることができると思います。

是非ライブでご覧になって、このシステムを先生方のものにしてみてはいかがでしょうか。


レポート:歯科医師/小西浩介先生

<<受講された先生方のご感想>>

▼全てが今まで行っていた臨床と違うため、目から鱗でした。講義中にあったスライドのレジュメとして頂けたらと思いました。素晴らしい臨床だと思いました。実際の臨床を是非みてみたいと思いました。2日間コースくらいでもう少しゆっくり詳細聞けたらいいなと思いました。

▼今回初めて受講しましたが、はじめて聞く内容ばかりで驚きました。有難うございます。

▼本日初回参加でしたので、このようなデンチャーがあることを全く知らず、強い印象を受けました。地域的にデンチャーの患者さんは大変多くいらっしゃいますが、全てといっていいほど保険義歯です。全部の手技は保険でもちろん適用は不可能ですし、現体制ではかなりむずかしく困難と思えますが、まずはスタディモデルをしっかり印象出来ることに当分努力し、今後につなげたいと思いました。

▼自分でも総義歯症例を経験してみたいと思うようになりました。

▼上下顎同時印象がいかに理にかなった方法か、あらためて実感しました。今回2回目の再受講ですが、ここでも新たな発見があり、繰り返し受講することは理解を深めていくと思いました。来月の実習とても楽しみです。

▼上下顎同時印象についてはじめて細かいことまで教えて頂き、とても勉強になりました。

▼人工歯の排列についてわかりやすく解説、説明して頂いたので明日から活用していきたいです。また総義歯の治療に対しての考え方が180度変わりました。少しずづ出来る部分から臨床にいかしていきたいです。

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